お知らせ & 法律相談コラム

SEO対策の債務不履行(令和4年2月25日東京地裁判決)

<事案の概要>

本件は,被告との間でいわゆるSEO対策(外部対策)を施すことを内容とする業務委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した原告が,被告の本件契約上の債務不履行を理由に本件契約を解除したと主張して,解除に基づく原状回復請求として,原告が被告に支払った業務委託料等の支払を求めた事案です。

※SEO対策の外部対策と内部対策について

「検索エンジンは,ユーザーにとって有用なウェブサイトを検索結果の上位に表示するために,多数のアルゴリズムに基づく評価をしているが,これらのアルゴリズムの内容は公表されておらず,そのため,SEO対策として確実な方法が確立されているわけではない。もっとも,検索エンジンがウェブサイトの有用性を評価するための要素の一つとして,外部ウェブサイトからの被リンクが考慮されているとされているため,この点に着目して,優良な外部ウェブサイドからの被リンクを獲得することによって対象となるウェブサイトの評価を上げ,当該ウェブサイトを検索結果の上位に表示することにつなげようとするのが外部対策である。他方,対象となるウェブサイトの内容自体を最適化することにより,検索エンジンによる当該ウェブサイトの評価を上げ,検索結果の上位に表示させることにつなげようとするのが内部対策である。」

<争点>

・本件業務の実施義務に関する義務違反の存否

・本件業務の実施についての報告義務の存否

 

<判旨>

・本件業務の実施義務に関する義務違反の存否

「本件業務には,外部ウェブサイトから原告サイトに被リンクを設定することに加え,被リンク用サイトを検索エンジンから高い評価を受けられるものとすることや効果的なアンカーテキストを設定すること等も当然含まれ,このことは原告・被告間の共通認識となっていたものと認められる。しかるに,被告は,被リンク用サイトとして検索エンジンの評価が高いウェブサイト(オールドドメイン)をインターネット上で購入することが可能であることを示す証拠(乙4)を提出するのみで,実際に検索エンジンから高い評価を受けられる被リンク用サイトを選定・準備したことや原告サイトへ外部リンクを張った被リンク用サイトの数や種類,アンカーテキストの内容等を一切明らかにしない。これらの事情に照らせば,被告は本件業務を実施していないものと認めるほかなく,被告には本件業務の実施義務違反があったといえる。」

 

・本件業務の実施についての報告義務の存否

「(1)被告は,本件契約の受任者として,原告の請求があるときは,事務処理状況の報告義務を負い,また,本件契約の終了後は,遅滞なくその経過及び結果を報告する義務を負う(民法656条,645条)。これに対し,被告は,本件条項を理由に,被告が本件業務の実施について原告に対する報告義務を負わないと主張するが,本件条項は「当該リンク設定を行った被リンク用サイト」を原告に開示しないことを定めるにすぎず(前記第2の1(2)エ),被告が事務処理状況等の報告義務を一切負わないことまで定めるものとは到底解し得ないから,被告の主張は採用できない。」

「(2)そして,被告は,上記1(4)のとおり,原告代表者から,①被告の行った本件業務の内容,②当該業務に支出した費用の明細及び③本件業務による効果の検証結果を報告するよう求められたにもかかわらず,Eにおいて,「SEO対策につきましての証明に関しましては,提示出来ません」,「SEO対策は,Googleが評価するものでございまして,A様(判決注:原告代表者)が評価するものでございません。」,「外部対策は実施しているため,ご返金は出来ません」,「ご納得されるかはA様のお気持ち次第にはなりますので,ご納得されないとのことでも,ご返金は出来ません」などと記載したメールを送信して,原告が報告を求めた事項について一切回答できないことを明らかにしたのであるから,被告には,本件業務の実施についての報告義務違反があったと認められる。なお,被告は,SEOワードの設定又は検索順位に関して原告に対する報告を行っているなどとも主張するが,上記1(5)のとおり,被告は,原告に対し,原告サイトのSEOキーワードごとの検索順位にばらつきがあるとしてSEOキーワードの選定を提案するとともに,SEOキーワードに対応した内部対策を行うよう求めたにすぎず,これをもって本件業務の実施についての報告義務を果たしたとは認めることができない。」

 

<若干の考察>

SEO対策をうたいながら実施には何もしない(何もできない)悪質な業者もいます。本事案が実際にどうであったのかわかりませんが、そういった業者に引っかからないようにするためにも、業者選定は慎重に行いましょう。

 

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