お知らせ & 法律相談コラム

宿泊施設予約サイト運営者に対する責任追及(令和元年9月5日東京地裁判決)

<事案の概要>

本件は,原告が、宿泊施設の予約に関するウェブサイトを運営する被告に対し,原告が「静かな部屋」をリクエストしたにもかかわらず,宿泊施設に仮囲いがあり工事が実施される予定であることをウェブサイトに掲載しなかった違法があり,また,被告が原告のリクエストを宿泊施設に正確に仲介しなかった債務不履行がある等と主張して,不法行為又は債務不履行による損害賠償請求権に基づき,宿泊施設のキャンセル料及びホテル側との折衝のために必要となった交通費等の支払を求めた事案です。

 

<判旨>

「本件ウェブサイトは,サイトを閲覧した顧客が,客室予約の手続を行うことのできるオンライン・プラットフォームであり,利用者は,無料で本件ウェブサイトを利用することができ,本件ウェブサイトを通じて予約が完了した時点以降,被告は,予約情報を宿泊施設に伝達し,利用者に予約確認書メールを宿泊施設に代わって送信し,利用者と宿泊施設との仲介のみを務めるものとされている。」

「被告において,本件ホテルの場所や宿泊料といった一般的な情報を超えて,本件ホテルが,原告固有の特別なリクエストにすぎない「静かな部屋」に対応することのできる状況にあるのか否かについてまで,本件ウェブサイトに情報を掲載して提供する法的義務が生じるとはいえず,」

「原告は,被告が予約内容を正確に仲介すべき債務を負っていたと主張する。この主張が,予約内容を正確に伝達すべき債務であるという趣旨であれば,原告が入力した他の予約情報が本件ホテルに伝達されていながら,特別リクエストのみ伝達されていないということは想定し難いのであるから,被告は予約内容を伝達する債務を履行したといえる。また,上記の主張が,被告において,本件ホテルに対し,原告が静かな部屋を要望している旨を伝えて,本件ホテルに何らかの対処を求めるべき債務があるとの趣旨であるとしても,上記イのとおり,被告の債務は予約の伝達と予約確認書メールの送信に尽きるのであって,それ以上に,被告が,本件ホテルに対し,原告の特別リクエストに応じた対処を求めるべき債務が存在するものとはいえない。」

 

<若干の解説>

宿泊施設を予約する際に、こうしたサイトを利用する方は多いと思います。利用者側の注意点としては、あくまでも仲介をするに過ぎず、利用者側の要望にどこまで応えるか、その能力があるかについては、宿泊施設側の問題であり、当該サイトとしては、宿泊施設から与えられた情報を掲示し、利用者側から伝えられた情報を宿泊施設に伝えるというところができていれば足りるということになりますので、特にこだわりがあるポイントについては、直接に宿泊施設に連絡を入れて確認をすべきということになるでしょう。

他方で、こういったサイトを運営しようと考えている方は、規約を整備して、宿泊施設が利用者側の要望に応えられなかった際に、当該サイトの責任を問われないようにすべきですし、利用者側から与えられた情報を過不足なく正確に宿泊施設に伝えることが大切です。

本件をどこまで一般化できるかという問題はありますが、仲介型のオンライン・プラットフォームを運営する際や利用する際には、気を付けておきたいところです。

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