お知らせ & 法律相談コラム

Twitterにおけるスクショと引用~東京地判令和3年12月10日~

Twitterにおいて投稿をする際、他の投稿を引用して自らのツイートを行うことは良くあることです。では、他のツイートをTwitterが規定する手順を取らずにスクリーンショットを撮って行った場合はどうなるでしょうか。その様なありがちな場面で起こった裁判例を紹介します。

<事案の概要>

本件は,原告がTwitter上に投稿をした各投稿のスクリーンショット画像を添付して被告が各投稿を行ったことに対し、原告が著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害されたと主張して,被告に対し,プロバイダ責任制限法に基づき,発信者情報開示を求めた事案です。

 

<争点>

・Twitter上のツイートの著作物性

・著作権侵害の有無

 

<判旨>

・著作物性について

これは前提で、この裁判例では全て認められています。もっとも、相手方がプロバイダですから、特に争わなかったということなのかもしれませんので、その点は次の争点との関係でも割り引いて考える必要があるかと思います。

 

・著作権侵害

「他人の著作物は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合には,これを引用して利用することができる(著作権法32条1項)。
これを本件についてみると,前記認定事実によれば,本件各投稿は,いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,ツイッターの規約は,ツイッター上のコンテンツの複製,修正,これに基づく二次的著作物の作成,配信等をする場合には,ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し,ツイッターは,他人のコンテンツを引用する手順として,引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると,本件各投稿は,上記規約の規定にかかわらず,上記手順を使用することなく,スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため,本件各投稿は,上記規約に違反するものと認めるのが相当であり,本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが,公正な慣行に合致するものと認めることはできない。
また,前記認定事実によれば,本件各投稿と,これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると,スクリーンショット画像が量的にも質的にも,明らかに主たる部分を構成するといえるから,これを引用することが,引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない
したがって,原告各投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しツイッターに掲載することは,著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないというべきである。
これに対し,被告は,引用に該当する可能性がある旨指摘するものの,その主張の内容は具体的には明らかではなく,本件各投稿の目的との関係でスクリーンショット画像を掲載しなければならないような事情その他の上記要件に該当する事実を具体的に主張立証するものではない。そうすると,被告の主張は,上記判断を左右するものとはいえない。したがって,被告の主張は,採用することができない。
以上によれば,本件各投稿は,著作権32条1項により適法となるものとはいえない。」

と判示しています。

 

<若干のコメント>

今回の裁判例を読む際にまず注意すべきは、先の緑色の部分である。発信者情報開示請求である以上、相手方がプロバイダであり、著作権侵害に対して真剣に争っていないという点です。真剣に争わないことの意味は、互いの主張立証が尽くされた結果ということではなく、まぁ別に何でも良いよというような感じで流されているという意味合いが強いです。そのため、真剣に争われた場合に同じ結論になるかと言えば、そうでは無いのではないかと思われるということです。

その点はさておくとしても、やはりTwitterでツイートをする際には、スクリーンショット画像を使ってさらにツイートをする方も多くおられるのでは無いかと思いますので、この裁判例が与える影響は少なからずあると思います。もっとも、本当にこれが正面切って著作権法上の引用に当たるか否かが争われた場合に果たして同じ結論になるのか、その点はとても興味深いです。

今言えることは、変に紛争になるのが嫌なら、無難にTwitter上で認められている引用ツイートの方法でやりましょうということですかね。疑問ですが・・。

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