よくシステム開発委託契約が締結され,その後にシステム保守契約が締結されることが良くあります。
システムは,建物などとは異なり,内容が必ずしも一見して明らかではなく,また,複雑な構成となっていることも多いため,検収時には発覚しなかった不具合が使用開始後に発覚する又は生じることがままあります。そのような事態が生じた場合,速やかに不具合に対処して欲しいと思うのがユーザー側の思いです。システム保守契約を締結しておけば,早急に対応してもらい,速やかに正常な使用ができる状態に戻すことが可能です。また,システム保守契約の中身は様々ですが,上記の様な不具合に対する対処のみならず,開発したシステムの仕様変更やアップデートも内容とするものやシステムの使用中に生じた疑問に対して適時適切に回答をするということを内容とするものなどもあります。
システム保守契約を締結するにあたり,考えなければならないのは,システムの不具合に対する対応をシステム保守契約の内容に含めた場合に,先だって締結されているシステム開発委託契約の瑕疵担保責任との関係です。システムの開発委託契約が請負的な性質を有しているとすれば,開発を委託された事業者には,一定期間,瑕疵担保責任に基づき修補する義務が生じます。この場合,当該期間中もシステム保守契約を締結しているとすれば,どちらが優先するのか,その間の費用はどうするのかなどの問題が生じかねません。
そのため,システム保守契約の中では,①瑕疵担保責任に基づく修補請求できる期間はこちらを優先し,システム保守契約に基づく保守はその期間経過後からにする方法,②瑕疵担保責任に基づく修補請求が可能な期間は,システム開発段階に原因がある不具合とそれ以降に生じた原因によって生じた不具合とを区別する方法,③瑕疵担保責任に基づく修補義務を排除し,全てをシステム保守契約に基づく保守に委ねる方法のいずれにするかを検討し,契約書の中で明記しておくことが良いでしょう。