ソフトウェア開発委託契約など企業間において交わされる契約の多くが,請負契約か準委任契約の形をとっています。請負契約は,仕事の完成を目的として締結される契約をいいます。準委任契約は,事務の処理を目的として締結される契約をいいます。誤解を恐れずに言えば,前者は「仕事が完成しさえすればよい(過程はどうでもよい。)」という契約であり,後者は,「仕事が完成せずともそれに向けた事務処理をきちんとしてほしい」という契約です。これらは契約の内容によって決まり,単に,題名が「請負」とされれば前者で,「委任」とされれば後者というわけではありません。「委託」という言葉を使うこともありますが,前者の意味で使う場合も後者の意味で使う場合もあるでしょうから,契約の内容を見て判断するよりほかありません。
では,どちらを採用すればよいかについては,以下のように考えることができます。
事業者がユーザーと共に完成への作業を進めていくことが予定され,事業者は専門知識やノウハウを提供する等という事務の処理が期待されるような場合には準委任契約が向いているといえます。反対に,事業者がユーザーの注文を聞くことはあるものの基本的には単独で作業を進めて完成品を収めることが期待される場合には請負契約が向いているといえます。JEITA『ソフトウェア開発モデル契約の解説』には,「ソフトウェアで実現するユーザ業務の固有性が強く,そこで使用される画面,帳票等にもユーザの固有性が現れるような場合」には準委任契約が適しており,「ユーザの固有事情に比較的左右されないような場合,長期の取引関係等からベンダにおいてユーザの固有性を把握できているような場合」には請負契約が適していると記載されています。
契約書の作成は,些細なところで差がつきますから,注意が必要です。