お知らせ & 法律相談コラム

インターネットの個人利用者による名誉棄損罪の成否(最判平成22年3月15日)

インターネット上における名誉棄損罪の成立要件についての判例を紹介します。

<事案の概要>

被告人は、フランチャイズによる飲食店「ラーメン甲」の加盟店等の募集及び経営指導等を業とする株式会社の名誉を棄損しようと企て、平成14年10月18日頃から同年11月12日頃までの間、被告人方において、インターネットを介して、自身が開設したHP上に「インチキFC甲粉砕!」、「貴方が「甲」で食事をすると、飲食代の4~5%がカルト集団の収入になります。」などと、同社がカルト集団である旨の虚偽の内容を記載した文章を掲載し、また、同HPの同社の会社説明会の広告を引用したページにおいて、下段に「おいおい、まともな企業のふりしてんじゃねぇよ。この手の就職情報誌には、給料のサバ読みはよくあることですが、ここまで実態とかけ離れているのも珍しい。教祖が宗教法人のブローカーをやっていた右翼系カルト「丙」が母体だということも、個の広告には全く書かれず、「店が持てる、店長になれる」と調子の良いことばかり。」と、同社が虚偽の広告をしているがごとき内容を記載した文章を掲載し続け、これを不特定多数の者の絵閲覧可能な状態に置いた。

 

<判示>

「個人利用者がインターネット上に掲載したものであるからといって、おしなべて、閲覧者において信頼性の低い情報として受け取るとは限らないのであって、相当の理由の存否を判断するに際し、これを一律に、個人が他の表現手段を利用した場合と区別して考えるべき根拠はない。そして、インターネット上に載せた情報は、不特定多数のインターネット利用者が瞬時に閲覧可能であり、これによる名誉棄損の被害は時として深刻なものとなり得ること、一度損なわれた名誉の回復は容易ではなく、インターネット上での反論によって十分にその回復が図られる保証があるわけでもないことなどを考慮すると、インターネット個人利用者による表現行為の場合においても、他の場合と同様に、行為者が摘示した事実を事実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があると認められるときに限り、名誉棄損罪は成立しないものと解するのが相当であって、より緩やかな要件で同罪の成立を否定すべきものとは解されない。」

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