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グーグルマップの個人情報データベース等該当性(東京地裁令和5年10月4日判決)

この裁判例は、地図アプリである「グーグルマップ」と個人情報保護法に関するものです。

 

<事案の概要>

本件は,被告が管理運営する地図アプリ「グーグルマップ」において、原告の経営する法律事務所についての投稿記事(以下「本件投稿記事」という。)が掲載されたことに関し、原告が,被告に対し、個人情報の保護に関する法律(以下「個情法」という。)27条1項に違反して被告から第三者に提供されているとして、個情法35条3項に基づく第三者への提供停止を請求すること及び被告が本件投稿記事を削除しないことにより原告の利用停止請求権が侵害されたとして、慰謝料請求を行った事案です。

 

<争点>

グーグルマップが個人情報データベース等(個情法16条2項1号)に該当するか否か

 

<判決の要旨>

「グーグルマップでは、地図上に存在する、個人・法人を含む(場所に関連した)事業主のほか、川や山、道路や公園などの地名や企業名等特定の「場所」に関して口コミ情報として、ユーザーが投稿できるようにされており、当該「場所」に関する情報を検索して抽出する索引が付されたデータベース機能が備わっている」。「換言すれば、地図上の地点に結び付けて電子掲示板のスレッドが立てられている状況であって、地図情報の索引に従って検索すると、電子掲示板の内容がみられるデータベースということができる。」
「ところで、個人情報データベース等に該当するか否かについて、立法の過程(乙8)にも鑑みれば、インターネットの検索エンジンのように、検索した結果、たまたま個人情報が検索できる場合を含まないものとされ、個人情報データベース等に該当するためには、個人情報として体系的に構成され、索引が付されている情報を検索することが可能であることがその要件であると解される。」
グーグルマップは、前記認定のとおり、地図上の地点に関する情報を、体系的に索引をつけて整理したものであって、個人情報に着目してこれを体系的に索引をつけて整理したものではないから、個人情報データベース等に該当しないものと解することができる。
原告は、グーグルマップは、個人情報データベース等に該当することが明らかなカーナビに類するものである旨を主張し、実際にグーグルマップにはカーナビと同様に使用できる機能があることは明らかである。しかし、本件において議論の対象とされている本件投稿記事は、個人情報そのものである個人の住所を対象とした機能ではなく、地図上の地点に結び付けられた電子掲示板のスレッドに投稿・記載された口コミ情報に関わる機能についてであり、グーグルマップがカーナビと同様の機能を有しているからといって、グーグルマップに記載されたすべての情報について同じ扱いをすべきことにはならない。個人の住所情報を体系的に索引をつけて整理したカーナビと、地図上の地点に関わる情報として整理されたものであるグーグルマップ上の口コミ情報は、その性質に大きな違いがあるといえ、同一の性質を持つものということはできない。原告は、個人事業主に関わる口コミのページは、個人情報として検索できるように管理されているとも主張するが、そのように認めるに足りる証拠もない。

 

<若干の解説>

個人情報保護法上、個人情報データベース等を構成する個人情報は、個人データであるため、第三者提供には本人の同意が必要です。これに反して提供された場合には、利用停止を請求することができます。本件でもグーグルマップが個人情報データベース等に該当するとすれば、個人情報保護法に基づいて利用停止請求を行うことができるということになります。

裁判所は、原告の主張を排斥をして、グーグルマップは個人情報データベース等ではないと判示しました。「グーグルマップは、前記認定のとおり、地図上の地点に関する情報を、体系的に索引をつけて整理したものであって、個人情報に着目してこれを体系的に索引をつけて整理したものではないから、個人情報データベース等に該当しない」との判示の部分は、何に着目をして体系的に索引を付けて整理したかによって判断をしているように読めます。また、「個人情報そのものである個人の住所を対象とした機能ではなく、地図上の地点に結び付けられた電子掲示板のスレッドに投稿・記載された口コミ情報に関わる機能について」と判示する部分をみても「個人の住所」という個人情報に結びついているか、又は「地図上の地点」に結びついているかというてんも、何に着目がなされたのかによって判断を分けているように思います。

そのため、個人情報データベース等に該当するというためには、何に結びついているか、何に着目しているかがポイントになるのかもしれません。

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