<事案の概要>
本件は、ウェブサイト作成、運営、保守等の事業を営むAが、B会社及びその代 表取締役であるCに対し、Cがインターネット上のウェブサイトにおいて、各投稿をした行為が、被 告会社と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し又は流布する行為 (不正競争防止法2条1項21号)に該当し、当該行為により Aが信用毀損等の損害を被ったと主張して、Cに対して不競法4条に基づき、B会社に対して会社法350条に基づき、損害賠償請求を行った事案です。
<投稿内容>
①「★掲示板」 に、「匿名さん」として、「Aとか名乗る会社の超迷惑営業電話下調べもなしにか けてくるとはぬるい営業ですね」との内容を投稿しました。
②「Aの会社名、住所、公式サイト、地図、『口コミ掲示板1ページ目』として令和3年1月14日に行った投稿と同内容、『電話番号…の基本情報』には、令和3年4月15日から同年7月20日までを期間として、『アクセス回数 176』、 『検索回数 516』との内容」が投稿された。
③「A 特定商取引法に関する知識はなく、コンプラ イアンス担当者はおらず…何度も何度も電話してくる…さらに電話の人間は嘘丸出し営業ト ーク」
④「自分でネットに企業の誹謗中傷を書いて、それをネタにネ ットの誹謗中傷対策しますというマッチポンプ詐欺の会社」
⑤「自前で悪評判を立てた上で対策しますという…営業を行う 詐欺会社」
<不正競争防止法2条1項21号とは>
不正競争防止法2条1項は、不正競争に当たる行為を規定しています。その21号は「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」と定めています。ただ、本裁判例の直接的な論点は、4条「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、・・・・・・。」の適用問題です。
<結論>
①虚偽の事実といえるか否かの判断
本件投稿1の内容は、「A 特定商取引法に関する知識はなく、コンプラ イアンス担当者はおらず…何度も何度も電話してくる…さらに電話の人間は嘘丸出し営業ト ーク」と記載し、Aについて、特商法に関する知識がなく、コンプライアンス担当者がおらず、営業対象先に対し何度も電話をかけ、電話をした従業員が事実に反した話をするという事実を指摘するものである。当該記載を閲覧した本件ページの閲覧者は、Aが、法令を 遵守せず営業対象先に何度も電話をかけ、かつ営業担当者が事実に反する話をする営業活動 を行う会社であると読み取るものといえます。
Bによる令和3年1月14日の投稿、本件各投稿及び本件書面等の各内容等を踏まえると、Aが、営業対象先に係るインターネ ット上の口コミサイトの記事を印刷し、SEO対策の重要性やAの業務を紹介する文書と共に営業対象先に送付し、同じ頃に営業対象先に電話をした上で当該文書等に言及してAへの依頼を促す等の営業活動を行っていること、C会社に対し、同月及び7月に営業目的 で2回電話をし、本件書面等を送付したことが認められるものの、Aが法令を遵守せずに 営業の電話をし、またAの従業員が事実に反する話をして営業活動を行ったとはいえず、 本件投稿の記載は事実に反するといえます。
☞虚偽性が認められます。
次に、本件投稿の内容は、「自分でネットに企業の誹謗中傷を書いて、それをネタにネ ットの誹謗中傷対策しますというマッチポンプ詐欺の会社」と記載し、Aについて、営業対象先を誹謗中傷する内容の記事を予めインターネット上に書き込む等した上で、当該企業 に対し、当該書き込みを契機としてその対策業務を行う原告への依頼を促す旨の営業活動を行っているという事実を指摘するものです。
当該記載を閲覧した本件ページの閲覧者は、Aがこのような詐欺的な営業活動を行う会社であると読み取るものといえます。 しかし、本件証拠に照らし、Aが、自ら営業対象先を誹謗中傷する書き込み等をし、そ の対策等を理由に営業活動を行ったとはいえず、記載は事実に反するといえます
☞その虚偽性が認められます。
また、「自前で悪評判を立てた上で対策しますという…営業を行う 詐欺会社」と記載し、原告について、自ら相手方の悪評判を立てた上で、当該評判を契機と してその対策業務を行う原告への依頼を促す旨の営業活動を行うという事実を指摘するものであり、記載は事実に反します。
☞虚偽であると認められます。
②目的の正当性
Bらは、Bが本件各投稿をした目的は、Aの営業が悪質であることから、A に警告を発したり、他の業者が原告の営業に引っかからないようにするためであるなどと主張しました。
しかし、本件資料に係る口コミサイトの記載について、書き込みの時期と、AのC会社に対する架電の時期が相当程度、離れていること等を踏まえると、Aが営業手段として 自ら口コミサイトの記載を行ったとは認められない。
Aの営業手法及びC会社に対する営業行為を前提としても、本件各投稿の内容が全体として事実に反することに変わりはなく、Bらが主張する目的により本件各投稿行為が正当化されるものではないです。このことは、C会社がそのウェブサイトにおいて営業目的の電話を固く断り、迷惑であると判断した場合には、本件サイト等にその旨を登録すること等を記載していたとしても、同様です。
③営業上の信用を害するか、故意過失が認められるか
認められる。
④損害額
60万円
<ちょっとした解説>
web上の書き込みを原因とする損害賠償請求のうち、不正競争防止法違反を理由とした一例として参考になる一例だと思います。