検索エンジンサービス提供者において提供されるサービスの中で、ある単語を検索欄に入力すると自動的に予測した単語等を表示する機能があります。予測して表示される単語がプラスイメージの言葉であれば大抵は問題ないのでしょうが、反対にマイナスイメージの単語が予測で出てくるとそれによって利用者は、自らが検索しようとしている単語と予測で出てきた単語との関連性が強いものと判断して評価をしてしまうということが往々にして起こります。そこで、そのようなことが無いように検索エンジンサービス提供者に対して削除を求めることができるかが問題となります。
参考となる裁判例として、平成26年1月15日付け東京高等裁判所判決、平成27年2月18日付け大阪高等裁判所判決などが参考になります。しかしながら、結論としていずれも否定されています。先の東京高等裁判所の事案では、検索エンジンサービス提供者が提供している検索サービスの検索欄に自身の名前を入れると、身に覚えのない犯罪行為を連想させる単語が表示されるようになっていたため、これの表示停止と損害賠償請求を求めた事案です。これに対し、東京高裁は、「単語だけでは男性の名誉が傷つけられたとは言えず、男性が被った不利益は、表示停止でサービス利用者が受ける不利益より大きくはない」と判断し、請求を棄却しました。上告されましたが上告も棄却され、確定しています。
結局のところ、裁判所の判断基準としては、平成29年1月31日付け最高裁判所判決と同じであると思われます。そうすると、予測して表示される単語を表示させない法的利益が、表示されることによって利益を受ける検索サービス利用者の利益に優越することが明らかである場合でなければ、裁判所は表示停止を認めることはないということになるでしょう。
<平成29年1月31日付け最高裁が示した判断基準>※注:検索結果からの削除の事案
「検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると,検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」