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準委任契約か請負契約か(平成28年4月20日東京地裁判決)

<事案>

本件は、A株式会社から無線LANルータ機器の開発を受注した被告が原告に対し,同機器のソフトウェア開発を委託したが,原告において仕様の追加・変更等により追加業務が生じたとして、被告に対し、業務委託契約に基づき、上記追加業務の作業量に応じた追加報酬代金及びこれに対する原告が上記業務委託契約に基づく成果物を納品した平成24年1月31日から下請代金支払遅延等防止法2条の2第2項所定の60日が経過した同年4月1日から支払済みまで約定の年14.6%の遅延損害金の支払を求める事案です。

 

<争点>

本件では,本件契約の性質が争点とされた。つまり,委任契約か請負契約かという点である。この点に関し,東京地裁は以下のように判示する。

 

<判旨>

原告は、本件契約は、作業量に応じた報酬を支払う準委任契約であると主張する。しかし、本件契約書や原告が提出した見積書には、単価や工数が記載されておらず、上記見積書(甲9)には「無線LANルータ開発 一式」と記載され、本件契約に係る作業期間中も、原告から被告に対し、作業時間の報告等もされていないことからすると、単に作業量によって報酬を決める準委任契約であるとは認められない。

本件契約においては、報酬の支払が、成果物の検査合格(検収)という成果物の完成後とされ、原告は成果物に関する瑕疵担保責任を負うこと原告が本件ソフトウェア開発により作成した成果物の著作権を有し、被告による業務委託料の完済により、同著作権が被告に移転するものと定められ、まず原告が本件ソフトウェア開発における成果物の所有権を取得するとされていること等からすると、本件契約は、被告から受託された本件ソフトウェア開発における業務の完成を目的とする請負契約であったものと認めるのが相当である。

(おまけ)
「 もっとも、被告自身が、平成23年10月以降、追加の報酬を求めていた原告に対し、見積明細を提示するよう求めたことが認められ、これは、被告自身、本件契約の範囲外の作業か否かを検討した上で、追加報酬を支払うか否かを決める方針を示していたこと総合試験の対応工数が増加していた際に、a社担当者が原告から契約範疇外であると言われたらどうするかと被告担当者に聞き、被告担当者は、原告と話をする旨述べていること等からすると、本件契約は、本件見積りを行った平成23年7月7日時点で、本件開発計画書及び同年6月6日に納品された基本設計書(以下「本件基本設計書」という。)に記載された範囲の業務の完成を請け負ったものであって、同時点以降、a社又は被告が、上記範囲を超えて仕様の追加・変更があった場合には、本件見積りの範囲外であり、本件見積りの範囲外の作業については、その作業量に対応する相当な報酬を追加で支払う旨の黙示の合意があったと認めるのが相当である。」(追加・変更に対して相当な報酬を追加で支払うという黙示の合意を認めた。)

<解説>

本件では,請負契約か準委任契約かの判断をするに当たり,太字にした点が考慮されています。本件においては,請負契約の特徴と委任契約の特徴に照らしてどちらと解するのがより事実関係からして妥当であるのかを判断しています。例えば,報酬額の算定方法や支払時期,権利取得の時期,報酬の支払いと権利移転の関係等である。請負契約と委任契約の違いは,伝統的な論点ではあるが,実際に区別をしようとすると意外に苦慮することがおおいので,契約締結時においてどちらの契約として締結するのかについては明確にしておいた方が良いでしょう。

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