お知らせ & 法律相談コラム

発信者情報開示請求(肖像権侵害)令和2年9月24日東京地裁判決

<事案の概要>

本件は,原告らが,被告に対し,原告Aの著作物であり原告Bを被撮影者とする動画の一部等が,被告の提供するプロバイダを経由してインターネット上のウェブサイトに投稿されたことによって,原告Aの著作権並びに原告Bの肖像権及び名誉権が侵害されたところ,各損害賠償請求権の行使のために必要であると主張して,プロバイダ責任制限法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき,各権利侵害に係る発信者情報を求める事案である。

 

<争点>

肖像権が侵害されたことが明らかといえるか。

 

<判旨>

「人の肖像は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有する。そして,当該個人の社会的地位・活動内容,利用に係る肖像が撮影等されるに至った経緯,肖像の利用の目的,態様,必要性等を総合考慮して,当該個人の人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超える場合には,当該個人の肖像の利用は肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。」

「これを本件についてみると,本件画像は,原告Bを被撮影者とするものである。本件画像が含まれる本件動画の撮影及びそれをインターネット上の投稿サイトに投稿したのは原告Aであり,原告Bは夫である原告Aにこれらの行為を許諾していたと推認され,本件画像の撮影等に不相当な点はなく,氏名不詳者は上記投稿サイトから本件動画を入手したものではある。しかしながら,本件動画は24時間に限定して保存する態様により投稿されたもので(括弧内略),その後も継続して公開されることは想定されていなかったと認められる上,原告Bが,氏名不詳者に対し,自身の肖像の利用を許諾したことはない(括弧内略)。原告Bは私人であり,本件画像は原告Bの夫である原告Aが原告らの私生活の一部を撮影した本件動画の一部である(括弧内略)。そして,本件画像は,原告Aの著作権を侵害して複製され公衆送信されたものであって(括弧内略),本件投稿の態様は相当なものとはいえず,また,別紙投稿記事目録記載の投稿内容のとおりの内容に照らし,本件画像の利用について正当な目的や必要性も認め難い。これらの事情を総合考慮すると,本件画像の利用行為は,社会生活上受忍すべき限度を超えるものであり,原告Bの権利を侵害するものであると認められる。したがって,本件投稿によって原告Bの肖像権が侵害されたことが明らかであると認められる。」

 

<若干の解説>

肖像権が人格権に由来する権利であり、みだりに利用されない権利があることは当然です。もっとも、肖像権を侵害するものとして違法とされる場合は、裁判例が示す、種々の事情を総合考慮して社会生活上受忍の限度を超えるものであるか否かによって判断されます。今回の裁判例で参考になるのは、Instagramのストーリーに投稿した動画について肖像の利用を許諾したことはないと判示した点です。これによると、Instagramのストーリーに投稿したとしても、それは24時間後には消えるものであることからすると、自身の肖像の利用を許諾したとはいえないということになります。同じような仕組みを取り入れているSNSについても同様に考えるべきでしょう。仮に、永続的に残る場合には肖像利用を許諾したといえるということになるのかもしれません。

 

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