検索エンジンサービス提供者(Googleなど)が提供する検索結果から特定の情報を削除するよう求めることができるかについて、検討を行う際、参考になるのが平成29年1月31日付け最高裁判所判決です。
<事案>
Xは,児童買春をしたとの被疑事実に基づき,平成26年法律第79号による改正前の児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の容疑で平成23年11月に逮捕され,同年12月に同法違反の罪により罰金刑に処せられました。Xが先の容疑で逮捕された事実は、逮捕当日に報道され、その内容の全部又は一部がインターネット上のウェブサイトの電子掲示板に多数回書き込まれました。
検索エンジンサービス提供者がから検索結果の提供を受ける利用者が,Xの居住する県の名称及び抗告人の氏名を条件として検索すると,利用者に対し,検索結果一覧に表れるウェブサイトにつき,URL、ウェブサイトの表題及び抜粋が提供されるが,その中には、Xが先の容疑で逮捕されたこと等が書き込まれたウェブサイトのURL等の情報が含まれていました。
そこで、Xが,検索エンジンサービス提供者に対し,人格権ないし人格的利益に基づき,本件検索結果の削除を求める仮処分命令の申立てをした事案です。
<最高裁が示した判断基準>
「検索事業者による検索結果の提供行為の性質等を踏まえると,検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。」
<解説>
要するに、事案に応じて総合考慮するということなのですが、ポイントは、「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」としている点です。これは最高裁判所が、削除の可否に関する判断が微妙な場合については安易に検索結果の削除を認めないという姿勢を示したことを明らかにするものです。そのため、一般論としては、一定の場合には検索エンジンサービス提供者に対して削除請求をすることができるものの、それは極めて限定された場合に限られるという理解でよいと思います。有り体に言えば、「ほぼ不可能前提で考えて下さい。」と言うことになります。
ではどうするか、そのような名誉毀損ないしは侮辱的表現を掲載した者又はさせたまま放置している者を直接に対象として個別に削除請求をすることが最も有効な方法ということになるのでしょう。